こちらの記事でご紹介する「西尾の抹茶」ですが、2020年2月14日付でGI認証を取り消されています。
以下の記事は記録として残しておきますが、取り消しの経緯はこちらのページをご覧ください。
地理的表示(GI)保護制度ってなに?
地域には、伝統的な生産方法や気候・風土・土壌などの生産地等の特性が、品質等の特性に結びついている産品が多く存在しています。これらの産品の名称(地理的表示)を知的財産として登録し、保護する制度が「地理的表示保護制度」です。
平成26年6月18日に成立し、平成27年6月1日より施行された特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的表示法)に基づき運用されています。
表現が難しいところもありますが、フランスを例にあげると、シャンパーニュ地方で作られた発泡性ワイン、かつフランスのワインの法律(AOC法:原産地呼称管理法)に規定された条件を満たしたもののみ 「シャンパン」と名乗ることができるように、その地域で生産された付加価値あるものをブランド化し保護していくような制度です。
地理的表示(GI: Geographical Indication) とは?
農林水産物・食品等の名称で、その名称から当該産品の産地を特定でき、産品の品質等の確立した特性が当該産地と結びついているということを特定できるものです。地理的表示として登録が認められた産品には、地理的表示と併せて登録標章(GIマーク)を付すことができます。
日本茶では 「西尾の抹茶」 「八女伝統本玉露」が登録されている
「西尾の抹茶」はどんな特性があるの?
西尾の抹茶の特性は、一般的な抹茶に比べて鮮やかな碧緑色の外観や、渋味が少なくまろやかで強い旨味が続く味にあります。
この特性は、伝統的な「棚式覆下栽培」により生産された茶葉を、三河式碾茶乾燥炉(レンガ積み五段網・遠赤外線による乾燥方式)を用いて時間をかけて乾燥させ、愛知県岡崎市産の御影石でできた茶臼により、低速で微粉末状に挽くことによるものです。
西尾の抹茶の原料である西尾市産および安城市産の碾茶は、香り、水色、滋味、外観などを審査する品評会で、2004年に第58回全国茶品評会の碾茶の部産地賞で第1位を受賞し、第59~61(2005年~2007年)回では第3位を連続して受賞しました。
また、2007年には第56回全国農業コンクールにおいて、西尾市茶業組合(茶葉栽培農家)が名誉賞(農林水産大臣賞)を受賞しています。
関西茶品評会出品茶審査会においては、第64回(2011年)に碾茶の部産地賞で第1位を受賞し、第65回~第67回(2012年~2014年)に3位を受賞しています。
地域との結びつきは?
茶葉を栽培する上での自然的条件
「西尾の抹茶」の茶葉を栽培する茶園は、矢作川と矢作古川に囲まれた三角州が盛り上がってできた、なだらかな段丘に位置しています。
三角州の土質は、水はけのよい砂が混ざった赤土で、排水がよく表土が深いため、地下水位が低くなています。
このため、深根性である茶の根群が増加し、茶の品質に関与する旨味成分であるテアニンの生成を促進させるのに適しています。
また、周辺の年平均気温は16.4℃(西尾市消防本部による2003~2012年平均値)、年間降水量1409.9mm(一色観測地点の1981~2010年平均値)と、温暖な気象条件を好む茶の栽培に適しており、秋や春先の適度な降雨により芽や根が活発に生長し、充実した茶葉の生育を促しています。
茶葉の伝統的栽培法
根で生成されたテアニンは、地上部の生育に伴って茶芽に移行します、茶芽が日光にあたると光合成によりタンニンに変化します。
茶芽を遮光下で栽培すると、わずかな日光のなかで新芽がゆっくり大きく柔らかく展開し、光合成が抑えられるため、渋味の成分であるタンニンの増加が抑えられ、旨味の成分であるテアニンが多く残ります。
タンニンを抑えテアニンを多くするためには、被覆下で充実した茶芽を栽培することが重要となります。
西尾市および安城市で実施されている伝統的な「棚式覆下栽培」では、新芽から被覆材を離し、生育に合わせて遮光率を高めることにより、樹勢を低下させず、テアニンの多い充実した茶葉を栽培できます。
一般に、抹茶の原料となる茶葉の被覆期間は、玉露の20日前後より長くするとされているものの、他産地では茶園によりまちまちです。
過去の研究によれば、「被覆開始後24日を過ぎると葉緑素が急速に増加し、25日を過ぎるとタンニンが減少することから、碾茶としての品質を確保するには25日以上の被覆期間が必要だと考える」と言及されています。
西尾市および安城市では、新芽育成期より25日以上の期間にわたって被覆を実施することが、西尾の抹茶の特性である渋味の少なさやまろやかな旨味に結びついています。
荒茶碾茶の伝統的加工方法
茶葉を乾燥し荒茶碾茶に加工するため、三河式碾茶乾燥炉が使用されています。
三河式碾茶乾燥炉は、大正に入り碾茶の大量生産化に伴って、愛知県内において考案されました。
三河式碾茶乾燥炉は、茶葉の状態に応じて蒸し度、温度、乾燥度合の綿密な管理が可能であり、一般的な碾茶乾燥炉に比べ、じっくり乾燥し、安定した品質の荒茶碾茶を生産することができます。
昭和20年頃に本格的に導入され、現在、すべての荒茶碾茶加工業者が三河式碾茶乾燥炉を導入しています。
抹茶の伝統的加工法
西尾市および安城市に隣接する岡崎市は、抹茶専用の茶臼として、硬さ・キメの細かさ等の性質が最も適した御影石を産出し、優れた石細工の技術を持ちます。
岡崎産の御影石でできた茶臼を使い、低速(1分間で60回転以下を目安)でじっくり時間をかけて高熱を発生させずに茶葉を挽くことにより、色や香り、風味を損なわず抹茶を製造しています。
栽培の歴史
西尾市における茶葉生産の起源は、文永8年(1271年)に西条城主吉良満氏が実相寺を創建した際に、開祖として招いた聖一国師が茶の種を境内に蒔いたことによると言われています。
慶長6年(1601年)には貝吹村、永良村を新たに得た板倉勝重が、領民に心得を示した7か条の「仕置之覚」において茶園を手入れするよう示しています。
また、「西尾御領村分高付覚」によると、西尾藩が「茶代」という貢祖(税金)を市内の44の村々から取り立てており、江戸時代には市内で茶が栽培されていました。
明治5年には、紅樹院の住職である34世足立順道が京都の宇治から茶の種を持ち帰り、境内を開墾して茶園を開き、製茶技術を農家に普及させることに努めました。
明治17年に幡豆郡茶業組合が発足した後は、稲荷山台地一帯に開拓集団茶園の造成が進められ、今日の西尾の抹茶の基礎が築かれました。
明治30年代からは玉露から碾茶への変更が進み、昭和10年代に三河式トンネル碾茶機が考案されると抹茶の産地として飛躍的な成長を遂げました。
昭和25年頃より、碾茶機の燃料が薪から石炭に替わったことで碾茶生産の成長はさらに進み、昭和28年には稲荷山台地一帯に約150haの茶園が形成され、茶葉生産者、荒茶碾茶加工業者、抹茶加工業者が一体となって、抹茶に特化した生産地形成が進み、昭和30年には全国製茶品評会を西尾市で開催されました。
昭和40年頃までは、茶樹の被覆材として、よしず、藁を使用していたため、風で被覆材が飛ばされてしまい、25日以上の被覆期間を確保することが困難であったが、化学繊維の寒冷紗(かんれいしゃ)を被覆材として使い始め、昭和55年には全農家が化学繊維の寒冷紗を使用して25日以上の被覆期間を守れるようになり、現在の「西尾の抹茶」の生産方法が確立されました。
昭和35年頃には全国的な茶の大増産により西尾の茶産業は危機に陥りましたが、抹茶を食品加工用原料として用いることで販路拡大を目指し、平成22年までの40年間に生産量はほぼ倍増しました。
さらに残留農薬など食品の安全性に関する品質に35年以上前からいち早く取り組んできました。
平成26年の碾茶生産量(荒茶)は約459トンと全国碾茶生産量の20%超を占め、全国でも1~2位を争う「抹茶」に特化した生産地となっているのです。
10月8日前後の土日 は「西尾の抹茶」の日
西尾市では、昭和16年から西尾市内一部の中学校で地場産業の振興と勤労体験を目的とした「全校茶摘み」が開催され、昭和24年からは市内全中学校の全校生徒が行っています。
一部の小中学校では「全校茶会」が開かれるほか、毎年春には市民大茶会が催されます。
平成18年10月8日、市のメインストリート1.5kmの上に赤い絨毯を敷き詰め、1万4718人が2人組で向かい合って相手のために抹茶をたてて一斉に飲む「まちなか1万人 西尾大茶会」という茶会が催され、ギネスブックに認定されました。
10月8日前後の土日を「西尾の抹茶」の日とし、茶に関するイベントを開催する等、市民が抹茶に親しんでいます。
「西尾の抹茶」という名称は、昭和60年3月の「岡崎信用金庫『調査月報』産地探訪シリーズ」に掲載されており、平成21年には、「愛知県西尾市、安城市、幡豆郡吉良町(現西尾市)で生産された茶葉を同地域において、碾茶加工・仕上げ精製し、茶臼挽きした抹茶」として、特許庁の地域団体商標の登録を受けています。
地理的表示(GI)登録産品には何がある?
平成27年12月22日 ~ 令和元年6月14日 登録分
- あおもりカシス
- 但馬牛
- 神戸ビーフ
- 夕張メロン
- 八女伝統本玉露
- 江戸崎かぼちゃ
- 鹿児島の壺造り黒酢
- くまもと県産い草
- くまもと県産い草畳表
- 伊予生糸
- 鳥取砂丘らっきょう / ふくべ砂丘らっきょう
- 三輪素麺
- 市田柿
- 吉川ナス
- 谷田部ねぎ
- 山内かぶら
- 加賀丸いも
- 三島馬鈴薯
- 下関ふく
- 能登志賀ころ柿
- 十勝川西長いも
- くにさき七島藺表
- 十三湖産大和しじみ
- 連島ごぼう
- 特産松阪牛
- 米沢牛
- 西尾の抹茶
- 前沢牛
- くろさき茶豆
- 東根さくらんぼ
- みやぎサーモン
- 大館とんぶり
- 大分かぼす
- すんき
- 新里ねぎ
- 田子の浦しらす
- 万願寺甘とう
- 飯沼栗
- 紀州金山寺味噌
- 美東ごぼう
- プロシュット ディ パルマ
- 木頭ゆず
- 上庄さといも
- 琉球もろみ酢
- 若狭小浜小鯛ささ漬
- 桜島小みかん
- 岩手野田村荒海ホタテ
- 奥飛騨山之村寒干し大根
- 八丁味噌
- 堂上蜂屋柿
- ひばり野オクラ
- 小川原湖産大和しじみ
- 入善ジャンボ西瓜
- 香川小原紅早生みかん
- 宮崎牛
- 近江牛
- 辺塚だいだい
- 鹿児島黒牛
- 水戸の柔甘ねぎ
- 松館しぼり大根
- 対州そば
- 山形セルリー
- 南郷トマト
- ヤマダイかんしょ
- データ参考:愛知県HP
- 岩手木炭
- くまもとあか牛
- 二子さといも
- 越前がに
- 大山ブロッコリー
- 奥久慈しゃも
- こおげ花御所柿
- 浄法寺漆
- 菊池水田ごぼう
- つるたスチューベン
- 小笹うるい
- 東京しゃも
- 佐用もち大豆
- いぶりがっこ
- 大栄西瓜
- 津南の雪下にんじん
- 善通寺産四角スイカ
参考:農林水産省HP
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/register/index.html
地理的表示産品情報
https://gi-act.maff.go.jp/